10番がクルリと回転した次の瞬間──

ボールはゴールエリア内で守っていた相手エースの裏を突いて、ゴール右ポスト際に吸い込まれた。

ゴーーーーーーール!

マルハンカップ第21回日本電動車椅子サッカー選手権大会決勝戦後半、レインボー・ソルジャー10番・北沢洋平選手の、ゴール右手前タッチライン際からのフリーキックによる得点。相手選手の位置をしっかり確認し、巧みにコースを狙った見事なシュートだった。

マルハンカップ第21回日本電動車椅子サッカー選手権大会

 

実は──

この大会を取材するまで、僕の中での「電動車椅子サッカー」に対するイメージは、あまりワクワク感のあるものではなかった。

障害の重い選手が多いこと、電動車椅子を使ったスポーツであるということなどから、僕なりの勝手なイメージを描いてしまっていたからである。

電動車椅子──そのイメージを問われたとき、あなたはどう答えるだろう? 安全、安心、安定、重量、大型・・・といったところだろうか。スピード、俊敏、激しい、競技、躍動感・・・といったアグレッシブなイメージを持つ人は少ないのではないだろうか。

僕も同様だった。

「サッカー」ではあるが、他のサッカーのような激しいプレーやハイスピードの攻防戦など、電動車椅子サッカーのイメージとしてはまったく持っていなかった。

今思えば、障害者スポーツライターとしては失格なほど(苦笑)、浅はかなイメージだったのだが、この会場を訪れるまでの僕の電動車椅子サッカーに対する知識は、恥ずかしながらその程度だったということである。

日本選手権大会という国内最高峰の舞台の試合を間近で観て、僕の持っていたイメージは、見事なまでに砕け飛んだ。

そして、電動車椅子サッカーは、まさに、

──「サッカー」だと思った。

当たり前の話ではあるが、それが、僕が最も強く感じたことだった。

相手ゴールを目指して攻め合う、1つのボールを巡って競い合う・・・まさに「サッカー」。

足で蹴るか、電動車椅子で蹴るかの違いはあれど、キック、ドリブル、パスワーク、1対1の対決、セットプレー、ポジショニング、ディフェンス、シュート、ゴール・・・その見どころも「サッカー」そのもの。

素晴らしいプレーが出れば思わず「うまい」とか「スゴイ」とか叫んでしまう。シュートが外れれば「あー」と声を上げてしまう。ゴールが決まれば「おー」とか「やったー」とか「入ったー」とか思わず歓声を上げてしまう。観戦している者にとっても、その戦いは「サッカー」そのものだった。

気が付けば僕の目は、コートを駆ける選手たちの動きにくぎ付けになっていた。

ボールをコントロールしている選手、その選手からのパスを受けようと的確なポジションに移動しようとしている選手、相手の攻撃の芽をつぶそうとマークに付いたり、パスコースに割って入ろうとしている選手・・・試合の中でそれぞれが担っている各選手たちの役割に注目もした。

上体や頭を車椅子に固定している選手も多く、選手自体の動きは小さいため、一見すると選手たちは淡々と戦っているように見える。心肺機能の状態のよくない選手も多いため、他のサッカーで聞かれるような選手同士の叫び合いのような大声での掛け合いもない。

それでも、選手たちが熱くなっているのはよくわかった。

選手たちの表情には、その時々の状況に応じた感情がはっきりと表れていた。

酸素吸入用のマスクをつけている選手であっても、マスクの間から見えている目が、眉が、頬が、その心の在り様を、観ている僕らに伝えていた。

マルハンカップ第21回日本電動車椅子サッカー選手権大会

 

僕が驚いたのは、電動車椅子のスピードの速さと、それを巧みに操る選手たちの操作技術の高さである。

この競技のために用意された専用の車椅子は、「電動車椅子」というよりも「電動カート」と称した方がふさわしい、競技用のマシンである。

国内大会では時速6km、国際大会では時速10kmという最高速度制限が設けられている前進スピードもさることながら、驚異的なのはその旋回スピードの速さ。つまり、車椅子が回転するスピードの速さである。

選手たちの乗った車椅子は、選手たちのスティック操作に応じて、クルクルと駒のように高速回転する。競技用電動車椅子のその回転スピードの速さは、福祉用品として考えたときの車椅子のイメージからはまったく想像のできないものだろう。

遊園地によくあるティーカップやコーヒーカップをイメージするとわかりやすいかもしれない。目が回ってしまったり、酔ってしまったりすることもある、あのアトラクションと同じように、いや、それ以上の速さで回転しながらボールを蹴る(弾く)のである。

ただ蹴るだけではない。狙ったところに、狙った強さのボールを蹴り出しているのである。

電動車椅子サッカー選手たちの車椅子コントロール技術がいかに高度なものか、容易に想像できるだろう。

もちろん、みんながみんな競技者としてプレーしているわけではないし、他の競技と同様にレクリエーションとして楽しんでいる選手もいるから、すべての選手がこの域に達しているわけではないが、さすがに日本選手権大会で優勝を争うチームの選手たちの技術はみな一様に素晴らしかった。

電動車椅子というのは操作1つで、これほど自由自在に、激しく素早く動かせるものなのか──僕は、熱戦を見守りながら、日本を代表するトッププレーヤーたちの技術の高さに感嘆していた。

マルハンカップ第21回日本電動車椅子サッカー選手権大会

 

さて、マルハンカップ第21回日本電動車椅子サッカー選手権大会決勝戦の結果は──

北沢選手のフリーキックからの得点で勝利を決定づけた「レインボー・ソルジャー」が、最後まで反撃を続けた「奈良クラブ ビクトリーロード」を2対0で振り切り勝利。見事、大会2連覇となる優勝を飾った。

楽な戦いではなかった。

1回戦はPK戦までもつれての勝利。準決勝戦はPK戦でも決着がつかずの抽選による勝ち上がり。何か1つでも他チームに有利な条件がプラスされていたら、勝利の女神は違うチームに微笑んでいたかもしれない。決勝の舞台で戦っていたのは、今回とは異なるチームだったかもしれない。

それだけ上位に進出してくるチームの実力の差はほとんどないように見えた。

次の選手権大会でも緊迫した戦いが繰り広げられることだろう。予選大会での波乱もあるかもしれない。

戦っている選手たち、そして各チームを応援している人たちには申し訳ないが、単純に「サッカー」の試合を楽しみたい者にとっては実力均衡の接戦は見応えがあるし、おもしろい(笑)。

高速・俊敏な電動車椅子・・・いや電動カートが縦横無尽にコートを駆け巡る、この「サッカー」にも大いに注目していきたい。

 

>> マルハンカップ第21回日本電動車椅子サッカー選手権大会 レポート

>> マルハンカップ第21回日本電動車椅子サッカー選手権大会 フォトギャラリー